#5 多香寧の香りはどのように設計されているのか。

前回の記事では、
なぜ多香寧が「陰」と「陽」の二つの香りなのかをお話ししました。


では、その二つの香りは、
どのように生まれているのでしょうか。


多香寧の香りづくりは、
香料を選ぶことから始まりません。

最初に思い描くのは、
香りに触れたとき、人の感覚がどのように移り変わっていくのか。
その体験の流れです。


私たちが設計しているのは、
香りそのものではなく、
香りに触れた時間に生まれる体験です。

そのために大切にしているのが、
香りの強さのバランスです。


香りが強すぎると、
香りそのものの印象が前に出やすくなります。

反対に弱すぎると、
香りの存在に気づきにくくなります。


私たちが目指したのは、
香りを主張することではなく、

香りをきっかけに、
自分の感覚へ意識を向けやすくなるようなバランス。


その繊細な境界を探りながら、
何度も調整を重ねました。


また、香りは時間とともに表情を変えていきます。

最初に感じる印象。
少し時間が経ってから広がる印象。
そして最後に残る余韻。

その変化の中で、
香りではなく、自分の感じ方の変化に気づくことがあります。


私たちは、
この時間の流れも、
香りづくりの大切な要素だと考えています。


さらに、多香寧では、
香りの感じ方を決めすぎないことも大切にしています。

同じ香りでも、
昨日と今日では違って感じることがあります。

朝と夜でも違うし、
その日の気分や過ごし方によっても変わるかもしれません。

だから私たちは、
香りに決まった意味や物語を与えすぎないようにしています。

R8N1」「R8Y1」という香りの名前も、
先入観をできるだけ持たずに、
香りそのものと向き合っていただくためのものです。

こうした考え方は、
40年以上にわたり日本の香料開発に携わってきた調香師の経験によって支えられています。

目指したのは、
個性を強く主張する香りではありません。

日本人にとって自然に受け入れられやすく、
それでいて香りが前に出すぎないこと。

その絶妙なバランスを、
長年培ってきた経験をもとに、
何度も試作を重ねながら形にしてきました。

香りを設計するということは、
完成された香りをつくることではありません。

香りと向き合う時間の中に、
その日の自分を感じられる余白をつくること。

私たちは、
そんな体験を支えるために香りを設計しています。

香りは、
何かを与えるものでも、
自分を変えるものでもありません。

ただ少し立ち止まり、
今日の自分に耳を澄ますための入口。


だから多香寧の香りは、
今日の自分に、そっと出会い、
自分に戻る時間を支えるためにあります。

 

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